第854話さようなら

サスキアは一瞬、固まった。

やはり、自分のせいではなかったのだ。ナサニエルがもっと早く言ってくれればよかったのに。

彼女はすぐに安堵し、スマートフォンを操作していくつかの候補を見てから、ある場所を選んだ。「ここはどうかしら?」

ナサニエルは頷いた。「それと、ベンジャミンを迎えに行こう。今日の午後は幼稚園にいる必要はない。昼食後に半休を取って、イーガン邸に戻るんだ」

サスキアはナサニエルの表情を見て、なぜ戻るのかとは訊かなかった。

彼女は静かに考え込んだ。

ナサニエルにあんな顔をさせられる人間はそう多くない。彼女が知る限りではロビーだけだ。だから、今回の帰邸は彼と何か関係があるに違い...

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