山奥に置き去りにされたので、夫も息子も捨てて「天才科学者」に戻る

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第136章 彼女のはずがない

氷川昴はとっさに橘芹奈の方を見ると、瞬時に緊張を走らせた。

「転ぶんじゃないかと思って、つい焦ってしまったんだ」

 彼は早口でそう弁解した。

 橘芹奈は疑う様子もなく、頷いてその言葉を受け入れた。

 氷川昴が自分に気があるなんて話は、せいぜい二階堂香織や陽菜の冗談だろう。自分は何もしていないのに、それだけで氷川昴のような男性を夢中にさせられるほど、彼女は自惚れていなかった。

 彼女は視線を落とし、陽菜を軽く睨んだ。

 この娘を見ていると、一時間ほど前の光景が幻視されるようだ。満面の笑みで彼女の手を引き、「氷川昴をしっかり捕まえるのよ」とけしかけてきた二階堂香織の姿が。

 まった...

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