山奥に置き去りにされたので、夫も息子も捨てて「天才科学者」に戻る

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第103章 彼の条件を一つ飲む

家に戻り、陽菜を寝かしつけた矢先、橘芹奈のスマホに氷川昴からの着信が入った。

抜き足差し足で子供部屋を抜け出す。何か急用かもしれないと思い、彼女は通話ボタンを押した。

「無事に着いたか?」

氷川昴が尋ねた。

橘芹奈は「ええ」と短く答え、リビングのソファに腰を下ろすと、手近にあったポットから自分に水を注いだ。

温かいグラスを両手で包み込み、橘芹奈は氷川昴の言葉を辛抱強く待った。

しかし、受話器の向こうからは何の音も聞こえてこない。氷川昴と橘芹奈は、示し合わせたかのように沈黙に包まれた。

「……氷川社長?」

電波が悪いのかと思い、彼女はおずおずと問いかけた。

「ああ、聞いている...

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