第460話

「君は今夜も美しい…いつもそうだけど」彼はほとんど聞こえないほど静かに言った。彼の声が私の唇に微かな振動として触れ、キスしたい衝動と自制心との間で私は揺れ動く。足はゼリーのように震え、内臓は洗濯機のスピンサイクルのように回転している。ネクタイをきれいに結び、最後にもう一度引っ張ると、思わず両手で彼のシャツと襟を撫でた。彼に触れる感触で手が熱くなる。

私は何千回もこのネクタイを結んできて、それは息をするように自然なことだった。かつての自分に戻ったような感覚。アリックは一瞬立ち止まり、私の手のひらに身を寄せたかと思うと、すぐに姿勢を正して冷静に私のドリンクを返してきた。私はほとんど息ができない。...