第82話

ゾーラは自室から出ると、彼女より少し年上の女性が緊張した様子でドアの前に立っているのを見つけた。

「ルッケージ夫人、私はベニータです。あなたの専属メイドです。お食事の準備ができましたら、食堂までご案内いたします」

「あなた、さっきから廊下をうろうろしていたの？」

「はい。ルッケージ様からは、お休みの邪魔をせず、夕食をご希望になるまで単にお待ちするようにと厳しく言われておりました。一時間経ってもお出にならなければご主人が自らお確かめになるとのことでしたが、それまではここでお待ちするようにと」

「そう言ったの？」ゾーラはその言葉に口元をゆがめた。

「はい、ルッケージ夫人」

「どうしてそ...